第21回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表 第21回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表

第21回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表


受賞作品

今回もさまざまな経験を描いた力作をご応募いただき、ありがとうございました!
応募総数約170通の作品のなかから選ばれた、第21回「新コミックエッセイプチ大賞」受賞作を発表します。


  • ムライ
    入賞
    『インドアアラフォー漫画家がボルダリング始めてみたらどハマりした話』
    ムライ
    講評
    デスクワーク中心で体を動かす習慣のなかった作者が、ボルダリングに夢中になっていく様子を描いたコミックエッセイ。競技の基礎知識から始まり、小さな達成感を得て少しずつのめり込んでいく過程が丁寧に描かれていて、ボルダリングに馴染みのない読者にもその面白さを伝えようとする姿勢に好感が持てる。画力が高く演出や構成も優れているが、作者自身の表情が見えにくいキャラクター造形のせいか、やや淡々としすぎな印象も受ける。普段の生活模様や怪我をした時の挫折など、作者特有のエピソードや心理描写を掘り下げて共感性の高い作品に仕上げたい。

  • トナカイフサコ
    入賞
    『ハンガリーのミナコ』
    トナカイフサコ
    講評
    ハンガリーで暮らしていた幼少期の体験を、子どもの目線で情緒的に描いたコミックエッセイ。言葉もわからず慣れない異国の地での不自由な生活や、学校での繊細な人間関係など、子どもならではの「生きる姿」が丁寧に描かれていて、読み終えたあとにしみじみと心に残る作品になっている。空気感の作り方や間の取り方に優れており、雰囲気のある絵柄と合わさって、感情の揺れ動きが鮮明に伝わってくる点も魅力的。展開に緩急をつけたり、ハンガリーの文化や価値観の違いなどにもう少し焦点を当てると、作品の個性がより際立ち、幅広い読者の胸を打つのではないか。

  • ゆとせ
    入賞
    『ポスティングはじめました』
    ゆとせ
    講評
    ポストにチラシを投函する「ポスティング」を通して、作者の日常を丁寧に描いたコミックエッセイ。仕事を通して得た気づきや、ミスをしてしまった際に感じた人の優しさを、自身の過去の体験と絡めながら印象的に描いている。柔らかく温かみのある絵柄が繊細な心理描写と調和していて、心地良い読後感に仕上がっている。応募作の内容は扱っているテーマがややニッチなため、一冊の書籍にするには作品の間口を広げるための工夫や、大胆なテーマ変更が必要になりそう。些細な日常風景を切り取る観察力や表現力を活かして、より親しみやすい主題に挑戦してほしい。

第21回 新コミックエッセイプチ大賞 1次審査通過作品

審査会にて1次審査を通過した全作品の講評を掲載します。


  • 『たった1kmの挑戦~子どもが運動苦手を克服するには~』
    なつめ ももこ
    講評
    子どもと挑むマラソンを通して、親のリアルな心情の揺れ動きを描いた作品。予想外の展開で続きが気になる一方、大人の視点に終始し子どもの気持ちが見えづらい点や、全体のテーマがぼんやりしている点が惜しまれる。また、商業作品として絵柄や表現力にまだ課題が残る。今後は画力をさらに磨きつつ、作者ならではの独自性のあるテーマをより明確に打ち出し、読者の共感を呼ぶ作品作りに挑戦してほしい。
  • 『中国留学ビックリ日記』
    たち
    講評
    中国留学での異文化体験を、テンポ良くユーモアたっぷりに描いたコミックエッセイ。作者のギャグセンスやオチのつけ方が秀逸で、純粋に漫画として面白く読ませる力がある。一方で、10年以上前の体験談であるため情報の古さは否めず、現代の読者に届けるための新しい切り口やテーマの軸が不足している印象も受ける。確かな構成力と表現力を備えているため、より今の時代に合った別のテーマでの作品もぜひ読んでみたい。
  • 『子育てしながらドイツ語学び直し生活~めげない私にトイトイトイ~』
    茶山よもぎ
    講評
    子育てとドイツ語の学び直しを両立する日常を描いた作品。温かみのある絵柄や色使いで、著者の人柄が伝わる丁寧な作風に好感が持てる。一方で「なぜドイツ語なのか」「学んだ先に何があるのか」という目的が弱く、商業作品としてはターゲットが限定的でニッチな印象を受ける。手書き文字の読みにくさや主線の曖昧さといった見せ方の課題を改善しつつ、より多くの読者が共感できる明確なテーマ設定を期待したい。
  • 『いまさらASDといわれても~中年からの神経発達症との向き合い方~』
    桜木きぬ
    講評
    43歳でASDと診断された著者自身の経験を描いたコミックエッセイ。確かな画力と構成力があり非常に読みやすい。一方で、ASDというテーマは類書も多く、本作独自の視点や差別化が難しいという状況があるのも事実。様々な概念や生きづらさの要因が混在し、テーマがややぼやけている印象も受ける。漫画を描くスキルは十分にあるため、情報を整理し、別の新しい切り口や実用的な題材での作品にも挑戦してほしい。
  • 『せんせい、ママになる』
    こやま家
    講評
    教員という仕事と育児の両立を描いたコミックエッセイ。社会的関心の高いテーマであり、教員のリアルな労務事情など深掘りできる要素が多い点にポテンシャルを感じる。ただ、現状は不満の羅列や綺麗事にも読める内容にまとまっており、読者の共感を呼ぶには人物の葛藤を丁寧に描く必要があるだろう。表情の硬い絵柄も今後の課題だと感じる。作者ならではの視点でリアルな壁に鋭く切り込み、より深みのある作品作りに期待したい。

編集長総評


第21回「新コミックエッセイプチ大賞」総評
第21回「新コミックエッセイプチ大賞」を開催しました。
リニューアル前の「コミックエッセイプチ大賞」と合わせて通算50回目の開催となる今回は、郵送応募とWEB応募ともにたくさんのご応募をいただきました。

今回は応募作品のなかから、『インドアアラフォー漫画家がボルダリング始めてみたらどハマりした話』『ハンガリーのミナコ』『ポスティングはじめました』の3作品が入賞となりました。おめでとうございます。

受賞作3作品はテーマや作風がまったく異なる作品になりました。選考会では、『インドアアラフォー漫画家がボルダリング始めてみたらどハマりした話』は画力や構成力の高さ、『ハンガリーのミナコ』は心情描写の繊細さ、『ポスティングはじめました』は日常を切り取る視点のユニークさと、それぞれ評価された点も違っています。そのなかであえて共通点を見つけるとしたら、それは「余白」ではないかと思います。3作品ともこのままの内容で書籍化をするというよりも、もっとテーマを深堀りできるのではないか、より独自の視点を磨けるのではないか、さらに読者を広げるための工夫ができるのではないか、そんな余白を感じる作品だったと思います。
この受賞作から発展してどんな作品が生まれるのか、とても楽しみです。

「コミックエッセイプチ大賞」は20年近くにわたって数多くの新人作家さんの登竜門となってきましたし、今後も多くの才能を発掘する場として、長く続けていければと思います。ですが、昨今はますます作品のテーマも描き手も多様化しているため、コミックエッセイプチ大賞だけではその才能を見つけきれていないことを実感しています。
そうした状況をふまえて、KADOKAWAコミックエッセイ編集部では現在、プチ大賞以外にも複数の新人賞を実施しています。

猫コミック新人賞
キャラクターコミック新人賞 ※キトラ編集部との共同開催

これはと思う新人賞があれば、ぜひご応募をお待ちしています。

次回の新コミックエッセイプチ大賞の応募締切は2026年8月末日です。詳細はコミックエッセイ劇場のプチ大賞ページでご確認いただけると幸いです。
引き続きたくさんのご応募を心よりお待ちしております。

コミックエッセイ編集部
編集長 山﨑 旬