第18回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表 第18回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表

第18回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表


受賞作品

今回も多数のご応募ありがとうございました!
応募総数180通を超える作品のなかから選ばれた受賞作を発表します。


  • てんてこまい
    入賞
    『戦争さえなければ』
    てんてこまい
    講評
    戦争が終結した後に家族全員を亡くした祖母が遺した作文をもとに、孫の立場から戦争の悲惨さと平和の大切さを描くコミックエッセイ。体験者の遺品や記憶を手がかりに当時の情景を描く難しいテーマに挑戦しているが、読者に80年前の戦争の恐ろしさを想像させるだけでなく、祖母の心情に共感させる工夫が随所に散りばめられている。現代と過去を行き来する構成も見事。この演出力があれば一冊の本としても良い作品になるのではないか。50歳で初めて中学生になったという祖母の生涯にも興味を惹かれる。
  • ジャッキーえんどう
    入賞
    『あなたの話が聞きたいのです。からっぽな私が「記者」になっていく』
    ジャッキーえんどう
    講評
    地方新聞社の記者として再就職した作者が、職場や取材先での出来事と自身の心の葛藤を描くコミックエッセイ。記者ならではの観察眼が作品にも反映され、細部まで丁寧に描かれている。また主人公の心が揺れ動く様子が物語に奥行きをもたらしている。コマ割りやフキダシの読みづらさなどは整理が必要で、演出面も改善の余地がありそう。記者という仕事で学んだノウハウを盛り込みつつ、実際に経験した印象的なエピソードや個性的な同僚たちとのやりとりなどを通して、主人公が成長していく作品を読んでみたい。

第18回 新コミックエッセイプチ大賞 1次審査通過作品

審査会にて1次審査を通過した全作品の講評を掲載します。


  • 『ハロー株活 〜アラフォー主婦の投資日記〜』
    益田 マムさん
    講評
    「株」という一見難しそうなテーマを未経験でもはじめられそうな、親しみやすい語り口で描いている点が好印象。間の図解ページもわかりやすく、上手に構成できている。一方でテーマにはやや難があり、「株式投資」を扱った書籍は専門家によるものも多いため、いかに実用的で、この作品にしかない情報を盛り込めるかは未知数。
  • 『ヲタク、飛田新地嬢になる』
    まるもちきなこ
    講評
    描かれている体験は貴重で、冒頭から引き込まれる展開に魅力があった。また、実際の体験はもちろん、著者自身の心の動きや成長を丁寧に等身大で描いており、感情移入しやすい作品であった。一方、題材がセンシティブなこともあり、もう少し体験自体を客観的に見て、良し悪しを判断する視点が必要だとの声もあった。
  • 『ぺり~の日記』
    ぺり~
    講評
    身の回りで起きた些細な出来事や知人のエピソードを、ユニークな絵柄で面白く描くことのできる、観察力の高さと豊かな表現力を感じた。ただ、テーマの弱さを指摘する声もあり、日常または家族の体験のどちらをテーマとするか、軸を絞り、取り上げるネタもそれに基づいて選定すると作品全体が読みやすくなるのではないか。
  • 『わたし、ご自愛ください』
    伊藤ぽんぽこ
    講評
    テーマ設定もよく共感度も高いが、アメリカの女の子に憧れたきっかけやパジャマパーティー後の変化など、もっとディテールを詰めて読者が真似したくなるようなブラッシュアップが必要。あえてかもしれないが、画力に課題があるので、もっと丁寧に描くことで絵からもワクワク感や楽しさが表現できるようにしたい。
  • 『彼女はセックスが出来ない〜ノンセクシャルというセクシャリティ〜』
    たこ
    講評
    著者名:たこ
    絵柄は可愛いが、ノンセクシャルの方々が抱える不安や葛藤の深さを描ききれていない印象を受けた。これまで刊行されてきたLGBTQをテーマにしたコミックエッセイにはない新しさも盛り込みたいところ。マジョリティも共感できるような2人だけの物語をどれだけ描けるかが作家の個性や魅力に繋がるのではないか。

編集長総評


第18回「新コミックエッセイプチ大賞」総評
第18回「新コミックエッセイプチ大賞」を開催しました。
リニューアル前の「コミックエッセイプチ大賞」と合わせて通算47回目の開催となる今回は、システム障害にともなうWEB応募の対応の変更でご迷惑をおかけいたしましたが、郵送応募とWEB応募ともにたくさんのご応募をいただきました。ありがとうございます。

応募作品のなかから、『戦争さえなければ』『あなたの話が聞きたいのです。からっぽな私が「記者」になっていく』の2作品が入賞となりました。おめでとうございます。

テーマは大きく異なる2作品ですが、限られた枚数の応募作に対して、「もっと続きが読みたい」「こういう要素を加えることでより内容の充実した単行本にできるのでは」といった、作者や作品に対する将来性、ポテンシャルに関する感想・意見が選考会で出たことは共通していたと思います。

プチ大賞の受賞作品は、そのままの形で書籍化されるケースはほとんどありません。受賞後に一から編集者が一緒になって企画を練り直し、タイトルを検討し、内容をブラッシュアップし、読者がお金を出してでも読みたくなる工夫を試行錯誤していきます。時にはテーマ自体をまったく違うものにして書籍をつくることもありますが、そのことをふまえても、作者や作品に対する将来性、ポテンシャルを感じるかどうかというのは新人賞の大きな選考基準になっています。

さて、新コミックエッセイプチ大賞は年2回の頻度で開催していますが、日頃から「編集者に直接、作品を読んでもらう機会がほしい」というリクエストをいただく機会が多々あります。2024年11月に開催されたコミティアでは、そうした声を受けてコミックエッセイ編集部として「出張編集部」で作品の持ち込みを受け付けました。当日は行列ができるほどたくさんの方に持ち込みをしていただき、改めてこうした機会の大事さを認識しました。
今後も出張編集部への参加が決まりましたらコミックエッセイ劇場や公式Xでお知らせいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

次回の新コミックエッセイプチ大賞の応募締切は2025年3月末日です。郵送での応募に加えて、引き続きWEB投稿を受け付けます。詳細はコミックエッセイ劇場のX及びプチ大賞ページでご確認いただけると幸いです。
引き続きたくさんのご応募を心よりお待ちしております。

コミックエッセイ編集部
編集長 山﨑 旬