第13回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表


受賞作品

今回も多数のご応募ありがとうございました!
応募総数200通を超える作品のなかから選ばれた受賞作を発表します。


  • 五十嵐タネコ
    入賞
    『生活保護JKだった話』
    五十嵐タネコ
    講評
    就労が困難な両親のもとに生まれ、生活保護を受けていた家庭での経験を描いたコミックエッセイ。構成が上手く、画力にも安定感があり、するするとテンポ良く読ませる力があった。インパクトのあるタイトルは昨今の電子書籍市場でも注目されやすく、書籍化に期待が持てることも受賞の決め手となった。本作では実家を出る過程はあえて省略されて描かれていたが、実際に実家から独立して一人暮らしを始めるまでの過程や、貧しい家庭における幼少期からの苦労など、膨らませることができそうな内容も複数あるので、担当編集と話し合い、多くの人に届く作品づくりに取り組んでほしい。

第13回 新コミックエッセイプチ大賞 1次審査通過作品

審査会にて1次審査を通過した全作品の講評を掲載します。


  • 『あの…付き合って10年経ちますがのろけちゃってもいいですか?』
    ハヤミユリ
    講評
    付き合って10年になる夫へのときめきを描いた作品。夫ののろけ話がどこまで需要があるのかと、のろけ話を描くなら登場人物の特徴づけやテーマを絞るなどの工夫が必要ではないかとの意見があがった。テンポ良く読めるコマ作りができていることから伸びしろが感じられるため、ぜひいろいろなテーマにチャレンジしてもらいたい。
  • 『お帰りなさいませ、ご主人様お嬢様!』
    タソ
    講評
    関西で売れないアイドルをしながら、メイド喫茶で働いた体験を描いた作品。トピックの面白さに惹かれるものの、ページ数の短さからそれ以上の評価に結びつかなかった。売れないアイドルとしての経験談に興味を持つ審査員も多かったため、そちらの経験の作品化も進めていくと良いのではないだろうか。
  • 『私は女でも男でもない性別でした』
    碧海自由(アオミミユ)
    講評
    幼い時から「女でも男でもない」と感じていた著者が、「Xジェンダー」という言葉に出会うまでの話。世間から押し付けられる女性としての生き方に違和感を覚えながら、男性になりたいわけではないという繊細な葛藤を描いているが、この人ならではの体験と結論がないと読んでもらうことは難しいのではないかとの意見があがった。
  • 『今日も手袋がはいりません』
    あげなす
    講評
    歯科でのアルバイト経験を描いた作品。個性豊かな歯科医師たちが描かれていて著者の観察眼がうかがえるが、情報量を整理する必要が感じられた。「読者に何を見せたいのか」を意識して描いていくとよいのではないだろうか。
  • 『人見知りの保険屋さん』
    小日向えぴこ
    講評
    新卒で生命保険の営業に就職した体験を描いた作品。絵柄、画力、読みやすさともに評価が高かった。ただ、読者の多くが読みたいのは保険営業の仕事内容ではなく、人見知りでどうやって営業をやっていけたのかという点だと思うので、「人見知り」というテーマで、どうやって読者の共感を得るかを掘り下げる必要があると思われた。
  • 『息抜きに「てづくり」はいかがでしょう』
    まるもち
    講評
    子育ての合間にDIYを楽しんでいる体験を描いたコミックエッセイ。ストレス発散として手作りを楽しむというのは共感できる読者がいると思うので、もう少し起承転結をつけて、読者に「私もやってみたい」と思わせるところまで仕上げられたら。

コミックエッセイ描き方講座 参加者の応募作品講評

2021年12月に開催したコミックエッセイ描き方講座に参加いただいた方からの応募作品の講評を掲載します。


  • 『自力開運のメソッド』
    miu
    講評
    シンプルだが親しみのあるイラストで、動物や小物アイテムの絵も含めて丁寧に描かれている。矢印などの記号を使って図解的に説明しているのもわかりやすい。難点は、全体を通して表現が単調なこと。ほとんどの4コマがナレーション+イラストだけで構成されているため、読者は作品から一方的に説明を受けているような気持ちになってしまう。フキダシを使ったセリフの掛け合いがあったり、エピソードによっては4コマではなく数ページの物語形式にしたりと、いろいろな表現方法を模索していってほしい。
  • 『LIVE LOVE LIFE』
    ヒイロ
    講評
    婚活で出会った「彼」をハットをかぶった犬の姿で表現するなど、不思議な世界観のある作品で個性がしっかり出ている。タイトルでは内容が想像できず、冒頭の入り方とその後の内容にもギャップがあるのは読者に対してやや不親切だが、芸術家肌の彼の言動と、それに主人公が一喜一憂する様子は面白かった。課題は作画で、一つひとつのイラストを丁寧に描いてしっかり着色すると作品全体の印象がぐっと良くなるはず。また、話の構成に多少独りよがりな部分があるので、もう少し読者を意識して「何をいちばん伝えたいのか」を明確にできると面白くなりそう。
  • 『まいにち思い出びより』
    まっぺ
    講評
    とてもかわいらしい絵柄で、タッチや着彩も含め画力に安定感がある。手書き文字の使い方も上手で、読者が親しみやすい印象になっている。一方で、主人公である母と子どもの造形が似ているため、初見の読者がひと目で区別できるような工夫がほしいところ。また笑顔はとてもかわいく描けているので、他にも表情のバリエーションがあると表現が広がりそう。落ちの弱いエピソードがいくつかあり、たとえば子どもの言動に対して主人公がもう少し過剰にリアクションをするだけでも、メッセージがより明確になると思う。子どもの難病については、作品にできることとそうでないことがあるはずだが、読者の知らない情報も丁寧に描写することで興味深い内容になるケースは多々あるので、作風を活かしつつ積極的にチャレンジしてほしい。
  • 『猫とは暮らせないと思ってた!』
    夜桜もち
    講評
    内容が想像できて、作者の心情も伝わってくるタイトルが◯。猫と同居することになった経緯の説明も丁寧で好感がもてる。また、主人公の大きいリアクションが作品全体の楽しい雰囲気を演出している。絵柄については少し粗い印象があるので、作画ツールの使い方も含めてもっと練習が必要。特に猫をモチーフにしたコミックエッセイは昨今たくさん発表されているため、画力や表現力を向上させないことには他の作品との差異化が難しくなっている。まずは猫を徹底的にかわいく描く練習をしてみてほしい。
  • 『私と「べきべき」ワールド』
    あま田こにー
    講評
    「読者にわかりやすく伝える」というサービス精神が旺盛で、言葉だけに頼らず様々な表現方法を駆使して情報を説明しようとする姿勢がとても好印象だった。エピソードの構成も安定感があり、情報をぎゅっと詰め込んだページと、少ないコマで心情表現を印象的に見せるページを使い分けるなど、メリハリがしっかりしていて読みやすい。また、たとえ小さくて個人的な物事であっても、何かを達成したりできるようになる主人公の姿に共感を覚える読者は多いと思う。絵柄的にはまだまだ伸びしろがあり、より魅力的なキャラクター造形、主線の太さの調整、細かなアイテムを含めたディテールを丁寧に描くこと、着彩に統一性を持たせることなど、練習を積んで工夫を凝らしていってほしい。
  • 『顔が覚えられない私の話』
    さのか
    講評
    「相貌失認」という、一般にそれほど知られているわけではない症状をテーマにしていながら、導入部分で自身の具体的なエピソードを披露したり、専門的な説明部分もイラストを効果的に使って噛み砕いて伝えようとするなど、作品全体から創意工夫が感じられた。作品への共感が重視されるコミックエッセイというジャンルにおいて、めずらしい経験や特性をテーマにした作品は一見すると共感度が低くなってしまうように思えるが、実はどんなに小さなテーマであっても表現方法によって読者の共感を誘うことはできるし、「自分も身に覚えがある」と感じる読者は少なくない。全体の構成はもう少し整理できるのと、作画や着彩がやや個性に欠ける印象があるため、今後は「自分にしかできない表現」で読者をファンにする工夫に挑戦していってほしい。

編集長総評


第13回「新コミックエッセイプチ大賞」総評
第13回「新コミックエッセイプチ大賞」を開催しました。
リニューアル前の「コミックエッセイプチ大賞」と合わせて通算42回目の開催となる今回も、郵送応募とWEB応募の両方でたくさんのご応募をいただきました。ありがとうございます。
応募総数約200作品のなかから、『生活保護JKだった話』が入賞となりました。おめでとうございます。

『生活保護JKだった話』は、就労が困難な両親のもとに生まれた作者が、生活保護を受けていた家庭での経験を描いたコミックエッセイです。10年以上前の経験をもとにしており、現在とは制度や社会状況の細かな違いはあるかもしれませんが、当時高校生であった作者/主人公の視点から見た生活の記録としても意義のある作品だと感じました。作品講評にあるように、読者の興味関心を強く惹きそうなテーマとタイトルは電子書籍に向いているかもしれません。
いわゆる一般的なコミックほどではないものの、コミックエッセイというジャンルも年々、電子書籍で作品を読む読者の割合が増え続けています。同じ作品でも紙書籍と電子書籍で反響が大きく変わるケースもめずらしくありません。書籍化に向けて作品をブラッシュアップするとともに、どういう工夫をすればより多くの読者に届けられるかを考えていければと思います。

今回、受賞された方には、賞金10万円と、編集部より担当が付いて書籍化に向けて動き出すことになります。すてきな作品が完成することを期待しています。
次回の新コミックエッセイプチ大賞でも引き続きWEB投稿を受け付けます。詳細はコミックエッセイ劇場のプチ大賞ページでご確認いただけると幸いです。
引き続きたくさんのご応募を心よりお待ちしております。

コミックエッセイ編集部
編集長 山﨑 旬