第14回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表 第14回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表

第14回 新コミックエッセイプチ大賞 結果発表


受賞作品

今回も多数のご応募ありがとうございました!
応募総数200通を超える作品のなかから選ばれた受賞作を発表します。


  • tk
    入賞
    『ひとり語学たのし日記』
    tk
    講評
    英語、ドイツ語、エスペラント語など、多数の言語を学ぶ日々を綴ったコミックエッセイ。英語学習という、多くの読者が興味を持つテーマを選んだ点はもちろん、作者が自然体で学ぶことを楽しんでいる様子が伝わり、審査会で多くの共感を集めた。語学をはじめ、学ぶこと自体に苦手意識のある人が「自分も新しく何かを始めてみたい」とわくわくするような作品を目指してほしい。
  • カヤサキユウ
    入賞
    『推しの捨て方』
    カヤサキユウ
    講評
    物を極力持たず、身軽なオタクになることを決意した著者が、推しのグッズを減らすために奮闘するコミックエッセイ。愛着ある物を捨てるためのマインドの持ち方が、片づけのメソッドとして分かりやすい構成で描かれていた。一方で、留学先でのエピソードを動機としているためか、テーマが散漫な印象となってしまったので、伝えたい内容を絞ることでブラッシュアップができそう。

第14回 新コミックエッセイプチ大賞 1次審査通過作品

審査会にて1次審査を通過した全作品の講評を掲載します。


  • 『いつかの日記帳』
    岡井考一
    講評
    鬱々とした日常や孤独感などを表現した作品。画力は高いが、テーマが著者の内面に向きすぎているのでもう少し読み手を意識するとよいのではないか。
  • 『うちの推しは絵が上手い』
    花房沙
    講評
    画家のパーソナルな側面に着目し、「推し」として紹介するという切り口は新鮮だが、具体的なエピソードをもっと見せてほしいという意見があがった。著者が面白いと感じている事柄を、読み手が納得いくように掘り下げていくことが必要ではないだろうか。
  • 『うちの旦那の海外出張が面白い!』
    ひか
    講評
    海外出張の多い夫の体験をコミカルに描いたコミックエッセイ。それぞれのエピソード自体は面白いが、テーマを絞って掘り下げられたら類似作品と差別化ができるのではないか。
  • 『え?私が?過干渉?』
    家子
    講評
    親の視点から「過干渉」を描くというテーマが印象的で、はっとさせられる読者も多いのではないか。昨今の親子関係への問題提起など、より深く掘り下げられたら良い作品になるのではという意見があがった。
  • 『がんばった日』
    たにかわつかさ
    講評
    家で過ごす女性の1日を描いた作品。絵柄が魅力的で絵だけでも見せられる力があるが、作者の言いたいことを伝えるには少し説明不足なように感じた。テーマをはっきりさせると良いのではないか。
  • 『ふつうの家族の宗教の話』
    ふくのん
    講評
    宗教2世の視点から家庭での出来事を描いた作品。時事的なテーマで興味を惹かれる編集者が多かった。実際に体験した人ならではのリアリティが感じられるが、漫画としての読みやすさを整えれば魅力のある作品になるのではないか。
  • 『喫茶店にて』
    のぞみ
    講評
    どこか地球外の星にある喫茶店で異星人と対話する作品。作者独自の世界観が一部の編集者に刺さった。何を見せたいのか、テーマ設定を工夫すればその世界観がより活かせるのではないか。いろいろな作品にチャレンジしてみてほしい。
  • 『私は「美味しい」が言えない』
    あらふじぺす
    講評
    妹への罪悪感から「美味しい」と口にすることができなくなってしまった作者が、過去の経験と向き合う話。画力への評価は高かったが、広く共感を得られるテーマかどうかが難しいと意見があがった。
  • 『人生時計12時なのでわたし自身に戻ります。』
    新藤さとえ
    講評
    「いい人」でいるための我慢から解放されたい、というテーマは共感度が高かった。見せ方を工夫する必要があるが、作者の経験を生かした作品づくりに期待したい。

編集長総評


第14回「新コミックエッセイプチ大賞」総評
第14回「新コミックエッセイプチ大賞」を開催しました。
リニューアル前の「コミックエッセイプチ大賞」と合わせて通算43回目の開催となる今回も、郵送応募とWEB応募の両方でたくさんのご応募をいただきました。ありがとうございます。
応募総数約200作品のなかから、『ひとり語学たのし日記』『推しの捨て方』が入賞となりました。おめでとうございます。

『ひとり語学たのし日記』は、タイトルのとおり楽しく言語を学ぶ生活を描いたコミックエッセイです。語学がテーマのコミックエッセイといえば、大ヒットシリーズ『日本人の知らない日本語』(蛇蔵&海野凪子)があります。また、『みちこさん英語をやりなおす』(益田ミリ)や『悪あがき英会話 アラフォー夫婦の挑戦』(松本ぷりっつ)など英語を勉強する作品も。
語学の本というとつい実用書をイメージしがちですが、言語を学ぶことそのものの楽しさ(もちろん厳しさも)を伝える活字エッセイは数多くあります。黒田龍之助さんの語学エッセイ(どれも面白いですが、『ロシア語だけの青春 ミールに通った日々』は特におすすめです)はもちろん、古くは『20ヵ国語ペラペラ ――私の外国語学習法』(種田輝豊)から最近だと『語学の天才まで1億光年』(高野秀行)まで、どのエッセイも読んでいると、勉強したことのない言語どころか、人生で一度も耳にしたことのない言語にまで興味がわいてきます。『ひとり語学たのし日記』は実用的なコミックエッセイよりも、こうした語学エッセイに似た雰囲気を持っていて、「知らない言語を学ぶことは楽しいこと」というメッセージが伝わってきました。ぜひこの雰囲気を活かして作品を練り上げていっていただきたいなと思います。

『推しの捨て方』は、実用コミックエッセイの王道ともいえる片付けをテーマにした作品。推しを捨てるというタイトルにはインパクトがありますし、好きなものを収集して置き場がなくなっている人には惹きつけられる内容なのではないでしょうか。
コミックエッセイ編集部が刊行した近年の片付けコミックエッセイとしては、『「ちゃんとしなきゃ!」をやめたら 二度と散らからない部屋になりました』(なぎまゆ)というシリーズがヒットしました。著者のなぎまゆさんは「元片付けられない人」。愛着のあるものを片付けたり捨てたりするのは誰だってつらいこと。だからこそ、片付けの専門家がビシバシと教える本よりも、読者が共感しながら一緒に行動を起こそうと思えるコミックエッセイという表現が有効だと思います。
『推しの捨て方』は、描きたいことやメッセージがやや整理されていない印象があったので、どんどんブラッシュアップすることで、一本筋のとおった片付けコミックエッセイになることを期待しています。

今回、受賞された方には、賞金10万円と、編集部より担当が付いて書籍化に向けて動き出すことになります。すてきな作品が完成することを期待しています。
次回の新コミックエッセイプチ大賞でも引き続きWEB投稿を受け付けます。詳細はコミックエッセイ劇場のプチ大賞ページでご確認いただけると幸いです。
引き続きたくさんのご応募を心よりお待ちしております。

コミックエッセイ編集部
編集長 山﨑 旬