重要なお知らせ

新刊発売記念!まめさん✕やまもとりえさん✕もつおさん座談会


まめさんの新刊『凡人すたいる。爆盛りスペシャルトッピング』、もつおさんの新刊『高校生の娘が精神科病院に入りバラバラになった家族が再び出発するまで』の発売を記念して、やまもとりえさんを加えたコミックエッセイ作家3人による座談会をお届けします。

<プロフィール>


まめ


・3人の子供を育てるシングルマザー。日々の出来事や妄想マンガをブログ「凡人すたいる。」とInstagram、noteで更新中。Webサイト「めちゃマガ」「よみタイ」などで連載中。著書に『凡人すたいる。 大盛り詰め合わせ』『凡人すたいる。 特盛り詰め合わせ』『おばさんデイズ』『おばさんデイズZ』『まめの推しごと』がある


やまもとりえ


・鹿児島県出身のイラストレーター。長男(天パ)、次男(貫禄)、4つ年下の旦那さん(なで肩)、猫のトンちゃん(ガリガリ)と大阪でのんびりと暮らしている。著書に『Aさんの場合。』『Aさんの恋路。』『お母さんは心配症!?』『今日のヒヨくん~新米ママと天パな息子のゆるかわ育児日記』『本当の頑張らない育児』『30歳女子、ネコを飼いはじめました。』『ねこでよければ』『わたしは家族がわからない』がある。


もつお


・関西出身。高校時代に強迫神経症を発症し精神科病院に入院。その過程を描いたコミックエッセイ『わたし宗教』で大学在学中にコミックエッセイプチ大賞を受賞。2021年、受賞作品を約3年間かけて描き直した『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』でデビュー。他の著書に『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』がある。

ーーよろしくお願いします。2022年12月に発売されたまめさんともつおさんの新刊のプロモーションとして、お三方にお互いの作品の感想や制作裏話などを自由にゆるくお話いただければと思っています。ちなみに、やまもとりえさんは2022年6月に『わたしは家族がわからない』という本を出したので、その話などもできればと。

やまもとりえ お二人に聞きたいこといっぱいなので、嬉しいです。まず、まめさんの『凡人すたいる。 爆盛りスペシャルトッピング』を読んで、夜中に声が出るほど笑いました。

まめ わーーありがとうございます!

やまもとりえ とくに描き下ろしが「鬼才現る」って感じで後半の畳みかけでは震えました。言葉のチョイスが素晴らしい! 喜劇の脚本とか書けるんじゃないかなと思いました笑。

まめ なんとか完成しましたが、描き下ろしとして描いた長編の創作は初めてだったので大変でした(笑)最後の畳みかけはどうしても入れたいと担当編集のヤマサキさんにお願いした部分なので嬉しいです。

もつお 私は、まめさんのブログを日々読ませていただいていたので、新刊の発売の告知が出たときからすごく楽しみにしていました! まめさんの漫画を読む時はいつも2回読む癖があって、1回目でじわじわと笑いが込み上げ、2回目で爆笑する…何度も読みたい作品だと思っています。新作も何度も読み返しています。
まめさんのご家族の話が面白くて大好きなのですが、妹さんと娘さんと推しが出ている映画に観に行った話は2人の動きと表情が最高なので全人類に見て欲しいです…!

まめ 2回も読んでくれてるだなんて、ほんとにありがとうございます! 映画を見に行った話は推しへの思いが溢れすぎて少々おかしくなっていますが(笑)共感してもらえてうれしいです。

ーー描き下ろし「史上最悪の結婚式」は、まめさんに打ち合わせで長編の創作漫画に挑戦してみましょうと提案したところから始まったんですよね。打ち合わせのときに「レンタル家族」というキーワードが出たのですが、送られてきたネームを見たら想像と全然違ったのでびっくりしました(笑)

もつお ”禁断の描き下ろし”と銘打たれているだけあって、誰にも予想がつかない展開で本当に大笑いしました! 65ページの長編ですが、テンポの良さが天才的で、息つく間もなく読み切ってしまいました!




『凡人すたいる。爆盛りスペシャルトッピング』より「史上最悪の結婚式」

ーーこれ本当の話なんですが、上司との打ち合わせ直前に「史上最悪の結婚式」のネームが届いて、読み始めたら時間を忘れてしまい打ち合わせをすっぽかしてしまい、めちゃくちゃ怒られました。

やまもとりえ 上司!笑

ーー上司「なんで打ち合わせすっぽかしたの?(怒)」
自分「あの…届いたネーム読んでたら時間忘れてしまい…」
上司「ネーム? なんの?(怒)」
自分「『凡人すたいる。』の新作の描き下ろしなんですが…」
上司「……そんなに面白いの?」
自分「はい…」
上司「……じゃあまあいいか」
って感じで許してくれました。


やまもとりえ 許してくれた笑。優しい。

まめ ヤマサキさんのそのエピソード、本当に笑ったのですが(笑)ありがたくて。創作がほぼ初めてで不安で仕方なかったので救われました。
テンポよく読んでもらうという部分はシンプルでストーリーをスッと読んでもらうにはどうしたらいいんだろうと考えて、りえさんの『わたしは家族がわからない』を参考にさせてもらいました。『わたしは家族がわからない』は最後の余韻が映画みたいで好きです。

やまもとりえ 『わたしは家族がわからない』を参考に!!?? どの辺を?ってくらいオリジナリティ溢れてましたよ!笑 初めてで不安になりながらもいきなり長編描けるなんて本当にすごいです。

まめ りえさんのを参考にしながら描いていたんだけど、どんどんふざけたがる自分が出てきてしまいました(笑)

やまもとりえ 溢れ出ちゃうんですね、まめ成分が。

もつお 私も『わたしは家族がわからない』を読んだ後は言葉にできない感情が渦巻いて、しばらく呆然としていました…。最後の余韻、本当に映画みたいですよね…! 私の母もコミックエッセイやセミフィクションが好きでよく読んでいるのですが、『わたしは家族がわからない』を読んだときに「今まで読んできた本の中で一番好きかもしれない」と言っていて、私の本棚から奪って母の本棚に飾ってあります…。

やまもとりえ お母さん!! ありがとうございます(泣)『わたしは家族がわからない』は本当にいい経験をさせてもらえたなぁと思っています。一度ハッピーエンドじゃないものを描いたことで、すごく気持ちが軽くなりました。不思議なもんです。




『わたしは家族がわからない』より

やまもとりえ もつおちゃんの『高校生の娘が精神科病院に入りバラバラになった家族が再び出発するまで』は、大変な体験をすごく客観的に俯瞰で見られる能力がすごいなと思いました。説明するのが難しいであろう場面を、読者にきちんと伝えてくれる優しさも感じます。

もつお 温かい感想をいただきありがとうございます…! なかなか理解しにくい心の病気がテーマなので、自分の表現が読者の方に伝わるか不安でしたが、そう言っていただけて安心しました(泣)

やまもとりえ あんな可愛い絵ですごく心を抉ってくるから、モフモフのぬいぐるみを抱っこしたら奥に針があったみたいで、めっちゃドキドキしながら読んでます。




『高校生の娘が精神科病院に入りバラバラになった家族が再び出発するまで』より

まめ 想像しただけでとても大変な状況だったと思います。私はどうしても親目線になってしまって、途中胸がギュッとなったり、絶望したりしたんですが、描き方によっては重くなる題材なのに、もつおさんのほっこりしていてかわいい絵柄でとても読みやすくなっている気がします。勝手に娘を見守るように読ませていただいて、勝手に幸せを祈りました(笑)

もつお ありがとうございます(泣)読者の方でも「主人公の幸せを祈ってます」という感想をくださる方がすごく多くて、私は本当に幸せ者です…。

やまもとりえ お二人に質問してもいいですか? 漫画を描くときのこだわりってありますか? 気をつけていることや、描く前のルーティンなど。

もつお 自分の気持ちが入り過ぎないように、客観的にかくということは一番気をつけています。あとナレーションの文字が多くなる癖があるので、出来るだけ絵で説明できる部分はキャラクターの表情やイメージで表現できるように意識しています…!

やまもとりえ ナレーション難しいですよね! 説明しすぎるのは嫌だけど、伝わらなきゃ意味ないし…と私も描いたり消したりしています。

まめ 私は、シンプルに読みやすくするのは気をつけているんですけど、内容や描き方にはあまりこだわりはないです。
描くときのルーティンは、毎回ではないけど、しいて言えばネームを書くときイヤホンをしてApple Musicで雨の音を聞くことが多いです。

やまもとりえ 雨の音! それはなんだか意外でした! 自律神経を整えてらっしゃる?

まめ 歌詞があるとひっぱられて歌ってしまうから、雨ぐらいがちょうどいいみたいです。

もつお 雨の音を聴きながら描くのって素敵ですね…! 私はテーマやプロットを考えるときやネームを作るときは、いつもファミレスかカフェで作業するようにしています。重いテーマを静かな空間で考えているとしんどくなることがあって…ガヤガヤしてる空間で考えるのが意外と捗ります。

やまもとりえ カフェでやってるんですね〜。確かにガヤガヤしてるほうがいい時ってありますもんね。人を見てると刺激もありそうだし、私もやってみようかな。

まめ カフェは何度も挑戦してるけど、人間観察になってしまって全然進まないタイプです。

やまもとりえ カフェで人間観察しちゃうのも、まめさんの才能なんだと思います。

まめ 集中力がないだけです(泣)

やまもとりえ 私は愛情を引き出さなきゃいけないときは宇多田ヒカルの「あなた」を聴いてます。


もつお 聴いてみたら、「愛情を引き出す」って言葉にピッタリな歌詞でちょっと涙目です…。私は新作を描いてる時に1番聴いてた曲は槇原敬之さんの「もう恋なんてしない」でした(作品の内容と全然関係ない)。


やまもとりえ 全然関係ないけど槇原敬之は私の初恋です。私が好きになる有名人はだいたい捕まる。

まめ 私の好きな人も捕まる。

もつお 私の好きな人も捕まるんです。

やまもとりえ みんな捕まる人に惹かれがち(笑)意外な共通点…。

もつお 捕まりフェチ…。

やまもとりえ ダメじゃん(笑)

まめ (笑)

ーー次の質問いきましょう。

やまもとりえ コミックエッセイを描くようになって変わったことってありますか?

もつお 小学生の頃からコミックエッセイをよく読んでいたのですが、実際に自分が描くようになって、ただ楽しんで読むだけじゃなくて作家さんの技術的な面をよく見るようになりました。コマの使い方や色使い、テンポなど作家さんの個性がたくさんあって勉強になります。

やまもとりえ 確かに描くようになってから見方が変わりますよね。たかぎなおこさんや小栗左多里さんの本は20代の頃にめちゃくちゃ読んだはずなのに、今になって読むとさらに凄さがわかると言いますか…。

もつお たかぎなおこさんや小栗左多里さんの作品は本当に凄いですよね…! 細部まで丁寧な色使いや表現は何度読んでも、何年経っても新たな発見があって、感動します。

まめ 私も他の作家さんのコミックエッセイをよく読むようになりました。あと活動的になったと思います!

やまもとりえ 活動的になったの羨ましいです〜。私はどんどん引きこもっていってる。

まめ 出不精だけど、ネタがなくなるからネタ探しに外に出るしかないという感じです(笑)

ーーお三方の最も好きなコミックエッセイを聞いてみたいです。

やまもとりえ たくさん挙げていいですか?
たかぎなおこさん『30点かあさん』
小栗左多里さん『ダーリンは外国人』
二ノ宮知子さん『おにぎり通信』
ヨシタケシンスケさん『ヨチヨチ父』
カフカヤマモトさん『家族ほど笑えるものはない』
益田ミリさん『お茶の時間』
こやまこいこさん『次女ちゃん』
あと20代前半は、太田垣晴子さんが編集してる『O』という本を舐め回すように読んでました。

もつお 好きなコミックエッセイがありすぎてめちゃくちゃ悩みました!
たかぎなおこさん『マラソン2年生』
野原広子さん『消えたママ友』
竹内佐千子さん『これからは、イケメンのことだけ考えて生きていく。』
中川学さん『くも漫。』
東村アキコさん『かくかくしかじか』

やまもとりえ 『これからは、イケメンのことだけ考えて生きていく。』がものすごく気になります笑。私も林遣都のことだけ考えて生きていきたい。

もつお 竹内佐千子さんは最新刊の『イケメンに会えない今、私たちはどう生きるか。』も共感の嵐なのでぜひ…! 林遣都さんかっこいいですよね。私もバンドマンのことだけを考えて生きていきたい…。

まめ じゃあ私も。
柘植文さん『喫茶アネモネ』
野原広子さんの作品全般
伊藤理佐さん『お母さんの扉』など
あとコミックエッセイじゃないけど、楳図かずおさん『まことちゃん』などなどです!

ーー全然1冊じゃなかった(笑)では最後の質問です。皆さんがこれからの執筆で挑戦したいことがあれば教えてください。

もつお とにかく今は何でも挑戦したい気持ちがあって、自分の過去のことや日々のことも描いていきたいし、セミフィクションも考えたい…今までとは違ったテーマの作品も作ってみたいです。取材やレポート漫画にいつか挑戦してみたい想いがあるので、そのためにも自分に力をつけたいです!

ーー前にちょっと話しましたが、もつおさんには『ハイパーハードボイルドグルメリポート』みたいな取材ものをいつか描いてほしいです。

やまもとりえ どういうこと?!笑

もつお ヤマサキさんから『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を教えてもらって観ましたが、めちゃくちゃ面白かったです! 世界中のカルト教団の村とか、ドラッグの溜まり場とか…いわゆる「やばい場所」で生きている方たちが普段食べているグルメをリポートをすることで、そこでの詳しい生活状況とかその方達の想いが直に伝わってくるんですよね。私もこういう取材ものを描きたいので、精神的にも肉体的にも鍛えます!


やまもとりえ もつおちゃんか僻地に(笑)もう面白い。絶対読む。

まめ 今ちょっと見てみたけどやばそうでした。あれは精神きたえられそう!(笑)

やまもとりえ 『ハイパーハードボイルドグルメリポート』気になってきた。私も見てみます!
私はすぐにではなくて、いつかやってみたいというので良ければ…前々からやってみたかったのは誰かの一生(もしくは半生)を丁寧に描いてみたいなーというのがあります。大袈裟じゃなくわざとらしくなく、時の重みを描けたらなぁと…いうのが理想です。

ーーやまもとりえさんの描く半生コミックエッセイ良さそうですね。小説でいうと『ストーナー』みたいなの。

まめ 私は創作で、韓国ドラマのような大袈裟な展開の漫画を描きたいです。違う時代にワープするとか入れ替わるとかよくあるパターンで思いっきり笑えるものや、アイドルが好きなので架空のアイドルの漫画も描いてみたいです。どっちにしても笑えるものが好きだと思います。

やまもとりえ まめさんの架空のアイドル面白そう。

まめ かっこよく描きたいけど、顔は全部凡人まめの顔になりそう。

やまもとりえ 全部まめ顔。最高ですね。「史上最悪の結婚式」の田中一郎の顔も絶妙で好き。

もつお りえさんの半生コミックエッセイも、まめさんの架空アイドル漫画も絶対読みたいので待ってます!!!